「民主的な教育ってなに?」がちょっとずつまとまってきた。

前からちょっとずつ発信し始めていた「デモクラティックエデュケーション」のイメージ。自分の中でだいぶまとまってきている。
一言でいうと、「民主的な環境のもとで、民主的な社会をつくる力をはぐくむ教育」。

  
とりあえず、現段階でのイメージをまとめて、積み上がっていく4段構造のモデルをつくってみた。多分、多くの人が「民主主義を教えよう!」とか言われた時に受けるような堅苦しい、難しい感じではない。きっと多くの先生たちが大事にしたいと思っていることと重なるものだと思っている。

 

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まず、子ども・学習者が権利の主体として尊重され、安心・安全な環境で、理不尽な抑圧や暴力を受けずに学び育てる環境であることが根本であると考え、1段目に置いた。多様なバックグラウンド、特性、能力を持っていることを前提に、マイノリティの子どもたちが不用意な言葉や環境で傷つけられないということ、場のルールづくりに子ども・学習者自身が参画できることなどもこの領域に含まれる。
 
そのうえで、自分の思いや考えを表現でき、かつ自分とは違う誰かの声に耳を傾け理解し合うコミュニケーション経験をたくさん積めることがとても大切な要素だと考えて2段目に置いた。自分も大事で、相手も大事。この感覚なしに、デモクラシーはない。

そして、3段目にスキル。誰かの意見を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えること。違う意見・考えの人と対話をし合意形成をしたり、もめごとを解決できること。民主的な社会をつくっていく上で、これらのスキルは欠かせない。

そして、一番最後に、トピック・テーマを置いた。社会や世界に実際にある諸問題を扱うこと。それを自分ごととして捉えることは、下段の経験を積んでいないとより難しい。一番上を扱う授業や教育実践は、アンテナの高い先生たちによって行われているし、教科書の中でも多少なりとも取り上げられているけれど、「今の問題」「自分の問題」として捉えるのが難しい現状がある。そのため、学校での学びがソーシャルアクションにつながることはどうしても少なくなる。

「1段目からやらないと意味がない」とか「下から順番に取り組んでいくべきステップ」だとは考えていない。また、すでに学校で取り組まれている事例もたくさんあると思う。これが私の目指したい公教育のすがたであるというのを示しただけ、と言えばそうかもしれない。
ただ、「誰もが自分を生きられる平和で幸せで民主的な社会・世界」をつくるためには、公教育の中でこれをやっていく必要があると、強く強く思う。

 
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また、こういう整理もしてみた。
これは、上の4段構造の「構成要素の図」とは違って、下から順番にしか階段を上がれない、と私は考えている。

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まず自分が自分にアクセスしている状態が第1ステップ。自分が何を求めていて、何を考えて何を欲しているのか。どうしたいのか、何が嫌なのか。それがつかめていて、大事だと思えていること。これがないままの他者尊重は、本来はデモクラティックなあり様ではない。

そのうえで、自分と同じ様に尊重されるべき意思をもった他者がいて、しかもそれは自分と違ったりする。ではどうする?と考え、話し合う。それが第2ステップ。

それが2人からもっと広がって、所属しているグループやコミュニティとしてどうするか?というレベルになるのが第3ステップ。みんなが幸せに過ごせるための仕組みやルールやカルチャーをつくっていく。

そして、その延長線上に、社会の仕組みやルールをどうする?というより高度で広範囲な問いが出現する。これが第4ステップ。社会について自分ごととして考えることは、その前の段階を踏んでいないとやっぱり難しい。逆に、それらを踏まずに語られる「社会ごと」はどこか心許ないと私は感じてしまう。

私は、この4つのステップが、「ここでは直結しているんだなあ」ということを北欧の社会に触れて感じた。そのことは以前このブログでも書いた。
 ↓

デモクラシーに根ざした、デモクラシーのための学校教育をつくろう。 - DEI by day - the way to democratic education -

まだまだ整理中の「民主的な教育/デモクラティックエデュケーション」ではある。
ともあれ、構成要素の4段モデルがある程度まとまったことで、自分がやるべきことはすごくクリアになった。
これらの構成要素について、現場に提案できる内容をまとめたり、参考になる事例を集めて整理する。それを再現可能なように、研修化、プログラム化するということ。
あー、スッキリ。
 
すでにやってきている部分もあるが、自分だけでは限界もあるので、いろんな人に助けを求めたりコラボをしながら、豊富化していきたい。
 
ヘイトスピーチのことは早急にやりたいのと、汎用性が高くて比較的取り組みやすい2段目、3段目に関する手立てをきちんと整理したい。(1段目の実現が、実は一番難点だと思っています)
 
そんなわけで引き続き考えつつ、手も動かしてまいります。